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谷間の百合

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「時代を代表する異形の名文」

きょうの「徽宗皇帝のブログ」が「黒子のバスケ」脅迫事件の被告人の意見陳述の全文を転載しておられます。

いまだ事件の概要さえ理解していないわたしですが、実は、先日その陳述書全文を読んで驚愕したところでした。

頭でっかちの人間や社会に背を向けた人間が書く文章は、とかく難解で意味不明なことが多いのですが、かれの文章は社会や自分自身への分析が鋭く客観的かつ論理的で、文章だけはわたしにもよく理解できました。

内容については、ブログ主さまが、この文章を細かく分析するのは自分の任ではないと書いておられるのですが、なおのこと、わたしにその能力はありません。

多分、精神分析や社会評論のプロにも手に負えないのではないでしょうか。

(かれらは一応「勝ち組」ですから)

「性格的にも善良で、、」と書いておられますが、わたしの印象もまさにそうでした。

そのことを感じて哀しみを誘われたのが、かれが同房の人間と「仲良く長話し」をして、

「こんなにかわいい弟がいれば、、、」とか

「こんなに明るくて、カッコよくて、ノリの良い友人が、子どものころにいたら、自分の人生も変わっていたろうな」と書いているところです。

また、「自分に対する取り調べは、民主警察、民主検察それそのものだった」と書いていることから窺えるのが、かれの善良さや、人と対等?に話ができる喜びが取り調べ官のこころを和ませたのではないかということでした。


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陳述書から。

≪自分のように人間関係も社会的地位もなく、失うものが何もないから罪を犯すことに心理的抵抗のない人間を「無敵の人」とネットスラングでは表現します。

これからの日本社会はこの「無敵の人」が増えこそすれ減りはしません。日本社会はこの「無敵の人」とどう向き合うべきかを真剣に考えるべきです。≫



なんでも社会のせいにして甘ったれるなとよく言われます。

しかし、それが言えるのは、小泉政権までです。

それ以降は明らかに社会のせいです。

政治のせいです。

小泉、竹中のせいです。


「時代を代表する異形の名文」_c0243877_10385326.jpg


(転載は「徽宗皇帝のブログ」の記事だけにしますが、、陳述文はそちらで読んでください。)

わたしは、記事の最後に書かれていることに同感するととともに、そこに強烈な暗示性を感じました。


この「被告人意見陳述」は、「円谷幸吉の遺書」とならぶ、「時代を代表する異形の名文」ではないだろうか。

被告人、渡邊博史の(本当は「氏」と、敬称をつけたいが、さすがに犯罪者に敬称をつけて呼ぶのは憚られる。)頭の良さと、犯罪そのものの稚拙さ(動機と実行内容との結びつきのいい加減さ)の乖離も興味を引くが、これは彼が「社会的自殺」として選んだ犯罪であり、自殺である以上は、適当に選んだ「自殺手段」である、と見るべきだろう。

自殺というものは、発作的に、勢いでやらないとできるものではない、と私は思う。である以上は、その手段が粗雑なのは当然だろう。

この文章の内容を細かく分析するのは私程度の頭の人間の任ではないが、ここに書かれた事柄は、今の日本における「負け組」の若者たちの心理を、どんな社会評論家や専門の学者などにも勝って描き出し、分析していると思う。

この文章をいい加減に見過ごすような人間は、学者や評論家の名に値しない、と断言したい。

被告人、渡邊博史は、現代日本の最上の社会評論家であり、精神分析学者である、と私は思う。

(他の評論家や学者の本など読んだことも無いが、私のアンテナに引っかからないのだから、私はそれらのほとんどを無価値だ、と看做すしかない。)


これほどの頭脳の持ち主が、「負け組」となるのは不思議にも思えるが、社会での「勝ち組」「負け組」を決めるのは頭脳のレベルではない。性格である。

文章を読む限りでは、渡邊博史は、性格的にもむしろ善良で、自分自身をよく客観的に見ている。

客観的過ぎるほどだ。

そういう人間は、しばしば自分自身を過小評価し過ぎるものだ。そこが、彼を「負け組」にした原因の一つだろう。

おそらく「専門家」たちは、この文章に幾らか見られる彼の同性愛的傾向を過大に取り上げ、社会の問題ではなく、個人の問題に矮小化するだろう。それは今から予言しておく。

だが、そういう問題ではない、と私は思う。彼自身の性格の傾向が、彼を「無意識の敗北主義」に導いたことは確かだが、それと同時に、確かに人間を「勝ち組」と「負け組」に分ける社会システムが厳然と存在し、その後者をこそ我々は何とかして変えないといけないのである。

ある意味では、彼は十字架上のキリストのように、一つの象徴ともなる存在である。≫


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by michi-no-yuri | 2014-04-03 10:19 | Comments(0)
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